漂う嫌悪、彷徨う感情。

80/86
前へ
/321ページ
次へ
   「真琴の事も一段落したし、あとは小田さんだね」  頬杖をつき、何か良案はないものかと思考を巡らせる。  「…私、思うんだけどさ。岡本さんって小田ちゃんの事、好きなんじゃないかと思うの」  美紗が、頭を捻る俺に突拍子もない事を言い出した。  「それはない。だってアイツ、俺と小田さんをくっつけようとしてたし」  「私、今まで漫画の中だけの話だと思ってたんだけど、少女マンガ男子って実在するのかもと思って」  美紗の話はもう、突拍子どころかわけが分からない。  「ちょっとごめん美紗。何言ってるか分からない」  「少女マンガに出てくる噛ませ犬男子って、相手が自分に気がないと分かるとスーッと引いて、逆に相手の恋を応援し出したりするんだよ。日下さんもそうだったんだけど。  だって岡本さん、タイミング良すぎると思わない? 小田ちゃんが困った時は必ず岡本さんが登場するでしょ?」  人差し指を突き立て『少女マンガ男子とは』の説明をする美紗。  美紗の言う事には思い当たる節がある。
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!

977人が本棚に入れています
本棚に追加