漂う嫌悪、彷徨う感情。

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 そう言われてみれば、岡本はいつも小田さんの味方をしていた。小田さんの為に怒ったり、小田さんの為に美紗を悪く言ってみたり。確かに岡本は、小田さんの置かれている状態を逸早く察知していた。  「岡本が…小田さんを…」  だとしたら…。  「美紗、ランチ食い終わったら、真琴の店にそのグロス届けに行こっか。ちょっと思いついた事があってさ。俺、『嘘は懲り懲り』って言ったけどさ、岡本を巻き込んで、真琴に協力させつつ、大ホラかましたいんだけど」  ふいに思いついた大嘘計画。  「真琴ちゃんにグロスを届けるのはもちろんいいけど…何をする気なの?」  美紗が眉間に深い皺を作った。  美紗に俺が考えた計画を話すと、  「…大丈夫? 勇太くん。上手に嘘吐ける?」  美紗が不安を露わにした。  「そこは美紗がこの土日で指南してよ。美紗、嘘吐くの上手いじゃん」  『ね、お願い』と美紗に両手を合わせると、  「言い方ヒドイ。とりあえず今日帰ったら練習しようか」  美紗が唇を尖らせながらも頷いた。  「よし!! そうと決まればさっさと食って真琴の店に行こう!!」    「うん!!」  月曜日、俺らの企てた嘘八百計画は成功するのだろうか。
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