彼女たちの過去。

5/17
前へ
/321ページ
次へ
  「お前が私に謝れよ。デートだって言ってるだろうが!! 折角髪の毛セットしたのにー!!」  俺を睨み付けながら手櫛で髪を直そうとする妹が、 「……」  俺の後ろで小さくなる美紗を見て手を止めた。  そんな妹に気付いた美紗が、横髪で顔を覆う様に更に下に顔を向けた。  美紗の様子がちょっと気になって、 「美紗?」  美紗の顔を覗こうとした時、 「おーい。いつまで玄関にいるのー? 中に入ってこいよー。お父さん、淋しいだろー」  リビングで俺らを待っていたオトンが業を煮やし、玄関で立ち話を続ける俺らを大声で呼んだ。 「はいはい。今行きますよー」  オトンに大きな声で返事をしたオカンが、 「もう。お父さん、淋しがり屋さんなんだから。お父さん、美紗ちゃんが来るの楽しみにしてたのよ。早く顔を見せてあげて」  とオトンに呆れながら美紗を手招きした。  オトンも美紗に好意的。  俺と美紗の結婚には何の障害もない。
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!

977人が本棚に入れています
本棚に追加