真冬の人魚姫。

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お酒が足りないと赤ん坊の様に泣くお義兄ちゃんと2人、海に面した丘を下る。 お酒の買い足しか、酔いを醒ます散歩か、目的は分からない。 「落ちるよー」 お義兄ちゃんは防波堤に登り、少しフラフラしながら歩く。けれど、頼りない笑顔は崩さなかった。 「あ、もうすぐ、俺と母さんが溺れた岩が見えるよー」 やっほーっとお義兄ちゃんは手を振った。 お義兄ちゃんのお母さんは溺れ、お義兄ちゃんは救助された、場所。 もし、お義兄ちゃんのお母さんが助かってたら、私もお義兄ちゃんも出会わなかった。傷つかなかった。 「俺ねー、人魚に合った事があるの」 「前にも聞いたよ」 「うん。人魚にね、助けて貰ったんだ。……綺麗だった」 そう言うと、防波堤の上を立ち止まり、満月を見上げた。 「海の中、淡く金色に光る髪。透き通る白い肌。俺を抱きしめてくれた、温もり」 全て、偽物で、 全て、本当で、 全てが夢の中だった。 「あんなに彼女を探したのに、あんなに人魚を忘れないように、俺は絵本作家になったのに」 心は満たされない。 心は不安だらけ。 「あ、あの人だ」 酔っ払いが感傷に浸ってる時、あの岩に今朝の人を見つけた。 相変わらず、寒そうなワンピースで、胡座を掻いて岩に座っていた。 「ねぇ、お義兄ちゃん」 「ん~?」 満月を見上げたままのお義兄ちゃんに聞いた。 「あの人、知り合い?」
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