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「永遠なんてない、かぁ」
泣き喚いたお義兄ちゃんを寝かせ、窓辺から海を眺めた。
相変わらず、ちらちらと雪は降っている。
お義兄ちゃんのパパは、ママが死んで、すぐに私のママと結婚した。
すぐと言っても10年だ。
でも、お義兄ちゃんには『すぐ』らしい。
死んだ人を思う気持ちに賞味期限切れなんてないけれど、思い出よりも隣に寄り添う人に思いは移る。
お義兄ちゃんは、寂しかったんだろうな。
ママが居た場所がなくなって。
パパがママにむけていた優しい笑顔は、私のママの物になって。
そして、また私のママ達が離婚したら。
どんなに人を好きになっても、気持ちは変わってしまうから、
お義兄ちゃんは変わりたくなくて、ずっと好きで居たくて、あの外人さんにもそれを求めてしまってたんだ。
……なんて情けない人だ。
吐く息が白く消える。
その人魚姫はいつまでも、海を見ていた。
消えない想いは、優しい絵本になって、雪の様に降り積もる。
……どうか夏になったら消える、雪のような――儚い想いじゃありませんように。
「外人さん、まだ帰らないの?」
毛布にくるんで、外人さんに会いに行くと、外人さんは私に一瞥すると、すぐに海を眺めた。
「このイヤリング、お義兄ちゃんの家に落としてたよ」
そう言って差し出すと、外人さんは目を丸くした。
「ありがとう、おちびチャン」
これで、還れるわ。
そう言って、優しく笑った。
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