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雪の様な白い真珠のイヤリングは、彼女の耳元で淡く光っていた。
「貴女は、お義兄ちゃんが好きだったの?」
隣に立って、私が聞く。
「そんな安っぽい言葉じゃ足りないわ」
そう言った。
「でも、重いかな。私に理想を押し付けて、本当の私を見てくれなくて。……本当の私はがさつだし、飄々してるし――この香りがなきゃ、上手く生きていけないし」
そう言って、外人さんは葉巻のような煙草に火をつけ、甘い香りを漂わせた。
「――貴女は人魚なの?」
私がそう聞くと、外人さんはただにっこり笑うだけだった。
「でも、明日には消えるわ。海の泡の様に。それで、彼の傷を守れるならば」
そう言うと、ゆっくり浜辺へ歩きだした。
「おちびチャン、イヤリングのお礼に。携帯、開いてごらんなさい」
私が携帯を開くと、ママ達からの着信が沢山あった。
ちょうど、たった今まで。
顔を上げたら、外人さんの姿は無くて、浜辺に足跡が残っているだけだった。
「お義兄ちゃん! お義兄ちゃん!」
お義兄ちゃんを揺さぶるが反応が遅くて、私はお義兄ちゃんの胸を叩いた。
けれど、叩いた力は弱々しく、涙で力が出なかった。
「お義兄ちゃん、あの外人さん帰っちゃったよ! 居ないよ!」
すると、お義兄ちゃんは目を覚ました。
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