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「お義兄ちゃんが好きって! 好きって言葉じゃ足りないって! でもお義兄ちゃんが望むなら海の泡になるって!」
「――おい?」
「怖い? 簡単に気持ちが変わるって思ってる? パパ達のせいで傷ついてるの!?」
「落ち着け、どうした?」
ぽたぽたと落ちる涙をゆっくり拭いて、お義兄ちゃんを見上げた。
「――ママ達、離婚しないって。お義兄ちゃんのパパ、お義兄ちゃんが電話に出ないって泣いてたよ」
だから、早く!
「あの人、追いかけて! 早く追いかけなきゃ、もう一生会えないよ。だって、お義兄ちゃんが好きだから姿を消すんだから!」
私がわぁわぁ、めそめそ、大泣きすると、お義兄ちゃんの顔はどんどん無表情になっていく。
そして、頭をポンポン優しく叩くと、軽く舌打ちをして、家を飛び出した。
そのまま、浜辺へと雪と共に消えていく。
既に、雪は消えていたけれど。
窓辺からでもはっきり見えた。
強く、強く、抱き合う2人を。
強く、強く、求め合って、傷ついている2人、を。
彼女が、本当に人魚なのかは結局分からないままだけれど。
2人の気持ちは、疑いようがなかった。
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