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「いきなり、泊めて欲しいだぁ!?」
玄関で心配そうに私を見下ろす、金髪に染めた髪が眩しい若い男の人。
私の足元のキャリーケースをいぶがしげに見下ろしている。
「――いいじゃん、別に。てか家出して来たの」
キャリーバックを持ったまま、私も負けじと睨み付けると、小さく溜め息を吐いた。
「……家出?」
「――ママ達が離婚する、かもだから」
「……入れよ」
重苦しい雰囲気に負けた優しい、『お義兄ちゃん』は私を招き入れた。
「やり♪ お邪魔しまーす」
今年一番の最低温度を記録した今日、一番寒いであろう海に面したこの家で、私は1年ぶりにお義兄ちゃんと再会を果たした。
無口で、見た目は怖いけれど、優しくて、可愛らしい絵本作家をしているお義兄ちゃんに、こう言えば泊めて貰えるって分かってたから。
「あ、ママには彼氏の家に泊まってる事にしてるから、連絡しないでね」
「……彼氏なんていねーくせに。あーぁ、面倒臭ぇなぁ」
ぶつぶつと文句を言っていたけれど、私は無視してお客様用の部屋にキャリーバックを置きに行った。
「あれ、お義兄ちゃん、客室掃除してるの?」
埃一つ無しで、窓も少し空いていた。
「……ああ」
言葉を飲み込む様に、そう呟いたけれど、私は床に落ちていた真珠のイヤリングを見落としはしなかった。
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