36人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
5年前に、私のママとお義兄ちゃんのパパは再婚した。
その時には既に18歳だったお義兄ちゃんは、絵本作家していた。同居の話もでたけど、この海の見える家から離れたくないから、と拒んでいた。
私は別に、新しいパパは優しいし、新しい家で1人部屋を貰えて嬉しかったので、お義兄ちゃんと一緒に暮らせなくても寂しくなかった。
ただ、夏には泊まりに来て、よく一緒に海で遊んだ。
とっても優しくて、私は大好きだった。
「お義兄ちゃん、風邪ひくよ?」
ベランダの窓を開けたまま、ワインのビンをテーブルに何本か転がしている。顔色は変わっていないけど、お酒臭い。
私は溜め息をつきつつも、毛布を被せてあげた。
ベランダの窓を閉める時に、夜の海を見て動きを止めた。
静かな波が寄せては返し、浜辺には微かにビルの灯りが映し出されていた。真冬の海は寂しくて綺麗だ。
「あのな、兄ちゃんな、」
呂律も回らないくせに、お義兄ちゃんは、むにゃむにゃと気持ち良さそうに言った。
「人魚に会った事があるんだよ」
そう言って、眠ってしまった。
「人、魚に………」
むにゃむにゃ寝言まで『人魚』とはね。さすがの私も苦笑してしまった。
何故なら、お義兄ちゃんの描く絵本は、人魚ばっかりだった、から。
この、コテージのような小さな家には、人魚の絵本がいっぱいだったから。
「全く! 現実はそんな綺麗じゃないんだからね!」
夢ばっかり見ているお義兄ちゃんが、少しばかり羨ましかった。
最初のコメントを投稿しよう!