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テーブルに座り、カタカタとパソコンに文字を打ちながら、お義兄ちゃんは、苦い珈琲を飲んでいる。
私は暖房が効いた床に座り、お義兄ちゃんの椅子を背に、テレビを見ている。
そして、やっとお義兄ちゃんは核心を聞いてくれた。
「……んで、離婚の話は、どこまで聞いたの?」
「うん」
「……うん、じゃなくてさ」
「うん」
テレビを見ながら、ぼーっと聞き流したかった。けれど、お義兄ちゃんも、聞きずらそうに2、3日様子を見てくれていた。いつまでも義妹を置いておくのも邪魔かもしれない。
「夜に、言い争いしてた。…最近してる。よく聞こえないけど、私の事で喧嘩、してる」
「うん」
「で、よく聞こうとしてママ達の部屋に行ったら、ママが叫んだの。『勝手にして! 私はあの子と出ていくから!』って」
「……うん」
「どうしたら良いか分からないから、とりあえず逃げてきたのさ」
諦めたように私が言うと、お義兄ちゃんは、珈琲をテーブルに置いた。
「――救えないよなぁ」
そうボソッと言うと、悲しそうに笑った。
「もし本当に、それが現実なら。――俺、どうやって人を好きになれば良いんだろ」
――何度も、人の気持ちの移り変わりを見ておきながら。
「彼女がずっと俺を好きで居てくれる自信なんで、出て来ないし」
「――彼女?」
今、私は両親の話をしていたのに、誰の話だろう。
ちょっとムッとすると、お義兄ちゃんは笑って謝った。
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