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その、イヤリングは知ってた。
お義兄ちゃんの客室にあった。
でも、何故……?
「ただいま」
「ふざけんなよ!」
携帯に怒鳴りながら、お義兄ちゃんはお酒の缶を握りつぶす。
ナイスタイミングで帰宅してしまった自分を殴りたい。
「関係なくないだろ! 俺だって家族だ! 妹を寂しがらせんなよ! なんだよ!」
ガコッと潰した缶を壁に投げた。壁には、当たった所に残っていたお酒かかり、ゆっくりと壁を伝い落ちていく。
「何だよ! 子ども傷つけても喧嘩したい理由があるのかよ!」
私に気づかないお義兄ちゃんは、弱々しく、声も体も震わせていた。
「妹は俺が育てる! お前らなんて嫌いだ! ばかー!」
酔っ払い、子どもっぽい暴言に、私は不覚にも笑ってしまった。
年上でしっかりしてて、優しくて頼りになると思ってたけれど、
お義兄ちゃんにも、弱い所はあったんだ。
「お前、」
私に気づいたお義兄ちゃんは、目をぱちくりさせた。
「ありがとう」
でも、救われないねぇ。
そうクスクス笑うと、お義兄ちゃんも悲しそうに笑ってくれた。
「お酒、飲もうよ! いっぱいあるよ」
床暖房が効いた、さっぱりした部屋に座り、2人クスクス笑った。
私は可愛い人魚のイラストの絵本の横に、缶ビールのタワーを作り、私はホットココアを作る。
月明かりだけが周りを照らすだけになるまで、私たちは飲みあかした。
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