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『でも、俺が抵抗して突っ撥ねても結局夜里さんの思い通りにするんでしょう?』
冷たさの混じる声で突慳貪に言われても全然言い返せない。わたしは項垂れて声を絞り出した。
「…うん。そうなる。…ごめんね、高城くん」
わたしは不意に喉にせり上がってきた塊を懸命に押し戻した。わたしが泣いてどうなる。悲しんだり傷ついたりする権利なんかない。
加賀谷さんとどうなったって高城くんは高城くんだ。彼に救われて、彼を必要とした。そのことはなくならない。多分今でも。
でも、並行して続けることはできない。二人がもしそれでいいって言ったとしても。わたしはそんなに器用じゃない。
自分の感情を押し隠すために何とか明るい声を出す。
「でも、どっちにしろわたしなんかとずっとはいられないよ。高城くんはこんな女と一緒になるような人じゃないもん。わたしがもし誰とも付き合わなくてもあなたと最後までいることはできないってわかってた。…こんな世界の人じゃない。もっと明るくて、太陽の光をいっぱいに浴びた裏や陰なんか感じさせない真っ当なちゃんとした女の子と…」
『…そういうのもういい。聞きたくないよ、あんまり』
彼は投げやりな声を出した。こんなことを言わせてる自分は本当に最低だな、と思う。
『何聞いたって別に事態は変わらないんだ。結局、俺はあいつに敵わなかったってことでしょう?頼りなくて、君を守れるって信じてももらえない。俺が世間知らずでガキだから』
「そうじゃない。わたし、加賀谷さんに守ってもらおうと思って彼のとこに行く訳じゃないよ。好きになったの、すごく。だからわたしが彼を守るの。いろんなこと一緒に背負ってもっと彼と分かち合いたい。これからは二人で生きるって。…そう決めたから』
かなり長い時間沈黙が続く。電話のこっちで心臓がぎりぎり痛んだ。
ややあって彼がぽつりと呟く。
『…最低だな』
「うん」
堪えきれず涙声になった。不意に彼が我に返ったように慌てた声を出す。
『違う、夜里さんが最低だって言ったんじゃないよ。なんていうか…、この、成り行きがさ。…こんなに望みなく終わるなんて。もっと足掻いたり、抵抗したりしたかったなぁって。…勝ち目ないんだなって、そのことがだよ。最悪、って』
わたしを傷つけたくない気持ちがありありと伝わってくる。最後まで高城くんは本当に優しい。
「そんな風に言わないでよ。
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