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わたしが悪いんだってことは間違いなくわかってる。高城くんがわたしなしでも大丈夫になるまでちゃんとそばにいて見守っていこうって思ってた。…それくらいしかできないけど、って。なのにそんなことさえ最後までやり通せないなんて」
彼がため息まじりに遮る。
『それはどっちみち無理だよ。夜里なしで大丈夫になんてならないもん、いつになっても』
そんなことない。わたしは密かに胸の内で考える。
最初に切り出した時はさすがに冷静じゃいられなかったみたいだけど、言葉を交わしてるうちに少しずつ高城くんも落ち着きを取り戻して、何処かで事態を受け入れる準備を始めたのがわかる。
本人が今考えてるより、彼にとって無理難題って訳じゃないんだ。新しい環境、今の人間関係の中で、もしかしたらわたしは既にちょっとずつ過去の存在になりつつあったのかもしれない。
「…本当は、こうなる気がしてた?…何となく、ちょっとは」
思わず口が動いてた。彼はしばし沈黙し、やがて静かに小さく呟く。
『わかんない。けど…、そうだな。なんか、嘉樹には敵わないんじゃないかなとは正直…。夜里さんもあいつも、お互いをそういう風に見てないって思ってたけど。でも、何かのきっかけで意識し始めたら多分…』
言葉が途切れて続かない。何とも言いようがなく、ただ次の台詞が出てくるのを待つ。彼がやがて独り言のように話を再開した。
『俺はずいぶん前から夜里さんのこと知ってたし、ずっと君を探して追いかけてたけど。二人はその間も人間関係がちゃんとあって、固く結ばれてて…。簡単に割って入れないってことはわかってた。ただ、二人が恋愛関係じゃないってそれだけが頼りだったから。…それって、一度相手が異性だって気がついちゃうとあっという間に展開が変わっちゃう可能性があるよね。だから、そこは運任せっていうか。危ういなぁと冷や冷やする気はあったんだ。…そしたらやっぱり、案の定…』
そのまま絶句する。わたしは沈黙に耐えられず、思わず口にした。
「…ごめんね」
彼は力なくだけど、そこで初めて笑った気がした。
『仕方ない…、かも。夜里さんだってわざとそうなった訳じゃないだろうし。それに…、本当に正直なとこ、後から割って入っていったのは自分の方なのかもしれないとはちょっとどっかで…、思ってはいた、かも。最初から敵いっこない相手に無謀な戦いを挑んでたのかな。…とか』
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