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「あ。あれって里中じゃね?」
大輔が窓の外にスティックを向けた。自然とその先の景色に視線が吸い寄せられる。
窓の外にいたのは、たしかにうちのクラスメイトの里中玲奈(さとなかれいな)だった。ソフトボール部に所属しているせいもあり、肌の色は小麦色。さっぱりしたショートヘアも相まって、いかにも健康的なスポーツ少女って感じだ。
「隣にいるのは……バスケ部の飯田くん? あの人、女子に人気あるよねぇ」
先ほどまで黙っていた静香も会話に加わった。
飯田……たしか二年三組だったな。交流はないが、クラスの中心人物だということは知っている。まぁイケメンだし、髪型もおしゃれだし、見た目完全にリア充だもんなぁ。
二人は立ったまま、グラウンドの隅で楽しそうにおしゃべりしている。
「顔がいいだけでモテるとか、どんだけ人生イージーモードなんだよ。イケメン爆発しろ」
大輔が吐き捨てるようにそう言った。モテない男子の僻みにしか聞こえないが、気持ちはよくわかる。イケメン爆発しろ。
「あ! ねぇ大輔くん、貴志くん! 里中さん、頭なでなでしてもらってる!」
「「なんだと!」」
モテない男子の声が見事にハモった。
窓の外では、飯田が里中の頭をぽんぽんと叩いていた。その動きはどこかぎこちない印象を受ける。
それにしても……里中のヤツ、顔を赤くして超嬉しそうなんですけど。ピュアかよ。
「くそ……飯田くんの家にピンポイントで隕石堕ちないかな」
俺がそうつぶやくと、大輔に「お前それ、モテない男子の僻みにしか聞こえないからな? 器の小さいヤツめ」と返された。いやお前に言われたくないわ。
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