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「ねぇ。里中さんたち、付き合ってるのかな?」
静香の弾むような声が隣から聞こえる。女子は恋バナが好きだと言うが、静香もこの手の話が大好きだ。
「男女が部活中に抜け出して仲良く会話している時点で、ほぼ付き合っていると見ていいんじゃないか? まぁ付き合い始めて日は浅さそうだ」
「え? そんなことまでわかるの?」
静香が目を丸くする。
「飯田くんの頭の撫で方、結構ぎこちなかったからな。やり慣れてないんだろ。付き合ったばかりで、どこまでスキンシップ取っていいのかわからず、手探りなんじゃないかなって思ったんだ」
「そっかぁ。貴志くん、よく見てるね」
俺に尊敬のまなざしを送る静香の隣で、大輔が「人間観察が趣味とかネクラだな」と茶々を入れる。いやお前にネクラとか言われたくないわ。お前の趣味、盆栽と会話することだろ。
「まぁ恋バナはいいとして、ボーカルの件、どうするんだ?」
尋ねると、大輔と静香は視線を落として床を見つめた。さっきまでの楽しい雰囲気が嘘のように霧散し、重たい沈黙が流れる。
俺は嘆息し、
「はぁ……とりあえず、今日は解散だな。ボーカル探しは明日から始めるか」
提案すると、大輔と静香はうなずき、帰りの支度をした。
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