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―――…
―…
海水浴のお客もまちまちになり、片づけをして帰る人々も増えてきた夕暮れの浜を後にして、憂真と蒼依も肩を並べて自宅へ向かう帰路をゆっくり歩いていた。
「…ねえ。憂真くん。」
「ん?」
「今日、人工呼吸をしてくれたの。憂真くんだよね?」
ふいに話しかけてきた蒼依の言葉に、憂真は浜辺の救助の時のことを思い出し顔が一気に恥ずかしさで赤くなった。
「なっ!?だ…だからなんだよ!?」
そんな憂真の反応に蒼依もどこか恥ずかしそうに顔を赤らめて俯きながら話を続ける。
「…私も一応女の子だから、ファーストキスは大事にしたいと思ってるの…。全然覚えてないけど…。」
「キ…キスっ…て、たかが人工呼吸だろ…!?」
蒼依の言葉に憂真は余計に顔を赤くして慌てて否定の言葉を返す。そんな憂真の返事に少しさみしそうに答えながらも蒼依はさらに話を続けた。
「そうかもしれないけど。私は…」
そこまで言って、恥ずかしそうに俯いたままだった顔を上げると。蒼依は覚悟を決めたように強い眼差しで憂真の目をまっすぐ見つめる。
「その相手が憂真くんで良かったなって、思っているよ。」
そして嬉しそうに微笑みながら言葉を結んだ。
「…蒼依…。俺も…お前でよかった。」
「憂真くん。ありがとう。」
“大好きです”
Fin..
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