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蝉の騒がしい鳴き声と運動部員の暑苦しそうなかけ声だけが響き渡る学園を後にして。
学園下の街まで続く長い坂道を、ブツブツと愚痴を言い合いながら憂真と蒼依は並んで歩いていた。
「ああっっ…ちいい…。くそお…冷山のヤロ~。なんで世間は夏休みだっていうのに…」
「補習で学園に呼びつけられないといけないのよ…。ハア~…。」
憂真の後を繋ぐように蒼依も言葉を続けると、大きくため息を吐いた。
「だよな!夏休みくらい休ませろてんだっ!?お前もそう思うだろ?」
「うんうん。憂真くん良いこと言うねっ!そのとーり!?」
そんな蒼依の言葉に憂真もおもいきり同意の言葉を返すと、何かを考えるように腕を組みながら再び口を開いた。
「…なんかよお。パアッー!?とおもいきり遊びたいな。気晴らしにさ。」
「パアッーとかあ…。う~ん…。」
憂真の言葉に、同じように腕を組みながら、蒼依も何か「パアッーとする遊び」を考えるように下を向いていた時だった。
蒼依の腕に何かがぶつかったような重い衝撃を感じた。
「っ!?」
「あっ…」
緩い下り坂とは言え、腕に感じた衝撃に完全に崩れた体勢では重力に逆らうこともできず。絶対に転ぶと覚悟をし蒼依はおもわず目をつぶった。
ところが、転ぶと思っていた体は地面から離れて止まったまま何事もなかったように足元にはいつもの通学路が広がっていた。
ただ違うのは、自分の肩に温かい手の感触を感じ。蒼依はそれが何かを確かめるためゆっくり振り返った。
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