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――…
―…
「ふう…。思いっきり泳いだから、なんか腹減ったな。何か食うか?」
「あっ、じゃあ私買ってくるよ。何がいい?」
「なんか悪いな。俺も行くか?」
「ううん。いいよ。」
濡れた頭をタオルで拭きながら憂真は蒼依に話しかけた。その横で蒼依も体を拭くと上着を羽織り言葉を返す。
「本当はお弁当を作ってこようと思ったんだけど、この炎天下でしょ?お弁当が腐って、憂真くんがお腹壊したらいけないと思ってやめちゃった。」
「…えっ。」
そしてさらに続けた蒼依の言葉に、憂真は驚いて蒼依の方へと振り向く。
思いもよらなかった蒼依の自分を気遣う女の子らしい言動に、憂真はおもわず自分の心臓がドキッと波打った。
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「…はあ。食った食った。腹がいっぱいになったら、急に眠くなってきた。ちょっと寝ていいか?」
「ふふ。どうぞ。」
満足そうにお腹をさすりながら優真は蒼依に話しかけた。そんな憂真の言動に少し笑いながら蒼依も言葉を返す。
「おうっ。一眠りして、またおもいきり泳ぐぞっ!」
「あはは。ホント優真くんらしいね。」
「う…うるせ~。」
可笑しそうに笑いながら自分に返事を返す蒼依の言葉に、憂真は少し恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「そうだ。寝るならこれお腹にかけた方がいいよ。」
そう言って蒼依は荷物の中からタオルケットを取り出すと当たり前のように憂真に手渡した。
「お前そんなのも用意してきたのか。(…やっぱり蒼依も女なんだな…。)」
自分に手渡してきたタオルケットを受け取りながら、憂真は目を丸くして蒼依を見つめる。
「ん?」
「な、なんでもない!それより、また一時間後に起こしてくれよな。」
おもわず口をついて出てしまった呟きを誤魔化すように。憂真は慌てて話を続けた。恥ずかしさで自分の顔が赤くなっているのがわかる。
そんな憂真の気持ちもまったく気がつかない様子で、蒼依は軽く返事をしながら、からかうような笑い顔を浮かべ憂真の横に正座をすると自分の太ももに手を置く。
「はいはい。なんなら膝枕でもしてあげようか?」
「えっ!!」
「あはは!ウソだよ。」
「…お前な。寝る!」
「あはは。はい。おやすみなさい。」
蒼依のからかいの言葉に赤い顔をさらに赤くしながら憂真は照れを隠すように少し強い口調で言葉を放つとタオルケットを被り目を閉じる。間もなくして蒼依の横で憂真は静かな寝息たてた。
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