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「大変だ!?女の子が飛び込んだぞ!?」
「えっ!?まさか、あいつ…。くそっ。」
ふいに波打ち際の方から聞こえた叫び声に、憂真は嫌な予感がして勢いよく向き直ると、慌てて声が聞こえた方へと駆け寄る。
口々に二人の女の子を案じる人々のひしめく間をなんとかすり抜け憂真が騒ぎの中心にたどり着いた時だった。
自分の首に抱きついて泣きじゃくっている女の子を抱え、ちょうど蒼依がふらつく足で砂浜に上がってきたところだった。
ふらつきながらも自分の足でしっかり歩いて浜に上がってきた蒼依の姿に、憂真はほっとして自分の顔に小さく微笑みが戻る。
蒼依が抱えてきた女の子も自分の足で母親の腕に飛び込むとさらに大きな鳴き声をあげて強く抱きついていた。
「佑実~。無事でよかった…。本当にありがとうございます!?」
親子の無事な再開を蒼依も自分の目でしっかり確認すると、かなりの体力消耗でふらつき青い顔をしながらも、ホッとした表情で弱々しく微笑みを浮かべた。
「よかっ…た…。」
《バタンッ!?》
ふいに、ホッとした微笑みを浮かべていた蒼依の体がグラッと大きくふらつくと、そのまま砂浜の上に仰向けで倒れ込んだ。
「蒼依っ!?」
蒼依の名前を叫びながら、彼女の横に慌てて膝をつけ駆け寄る憂真の目の前の砂浜の上で、青い顔のまま苦しそうに目を閉じた蒼依が倒れ込んだまま動かなくなっている。再び緊迫した空気が漂った。
「キャー!?女の子が…!?」
「大変だ!?やっぱり水を飲んでいたのか!?早く人工呼吸を…。」
そう言いながら、憂真と同じように蒼依の横にようやく駆け付けてきたライフセーバーの男の人が蒼依の肩に手をかける。
「蒼依!しっかりしろ!蒼依!?」
ふいに、蒼依の体を挟み自分の向かい側で必死に蒼依の名前を叫ぶ憂真の姿に気がつくと、ライフセーバーの男の人は何かに気がついたように憂真に向かって話しかけた。
「君。この子の彼氏だね。だったら君が人工呼吸をしてくれ。」
「えっ!?人工呼吸ってまさか…」
ライフセーバーの人にふいに指示された“人工呼吸”という言葉に、憂真は一気に顔が赤くなりおもわず躊躇してしまったように倒れている蒼依の顔を見つめ固まってしまった。
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