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「ン……アアッ……!九条さん……!」
僕の中にまだ彼が知らない僕がいるように。
当然ながら九条さんの中にもまだ僕の知らない彼がいる。
ここまで狂おしいほどの欲情を
この人が理性の中にしまいこんでいたのだとしたら。
それこそ恐るべき色魔は彼であり
僕は掌の上で転がされていただけかもしれない。
さまざまな憶測が頭をめぐる。
「ンア……ッ!アアアッ……!」
禅問答を繰り返す思考に反して
僕の口から飛び出すのは獣じみた声だけになった。
囃していた周りの連中も
いまや何かにとり憑かれたように耽る僕らを見つめていた。
九条敬のほとばしる欲情はそれほど激しいものだった。
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