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さっきから、ずっと機嫌の悪い幼馴染み。
私は一人、小さく座ったまんまみんなの幸せそうな姿をぼんやりと眺めていた。
泣かないように……我慢しながら。
「あー楽しかった、ちょっと休憩!」
そう言って女子の数人が私達の元へ戻ってきた。
二人きりじゃなくなったことに安堵する。
「おい」
そう言って立ち上がる彼。
見上げる私。
「かき氷買いに行こうぜ」
「あっ良いなー、私達も行く!」
「今度はお前らが鞄見てろよ。ほら、行くぞ」
言うなり踵を返してさっさと行ってしまう。
……何よ、もう。機嫌悪いくせに。
……漸く二人きりじゃなくなったのに。
「ま、待って」
それなのに体は勝手に彼を追いかけてしまう。
彼の後ろをとぼとぼと付いていく。
「……ほら、手!」
差し出される彼の黒い腕。
……?
「はぐれたら、お前一人じゃ戻れないだろ?昔から方向音痴なんだから」
そう言いながらもまだ表情は怒ってる。
戸惑っていると、「ほら!」とイラつきながら彼が強引に手を繋いできた。
……ばか。
その繋ぎ方、世間一般では恋人繋ぎって言うんだよ。
ただの幼馴染みにして良い繋ぎ方じゃないんだから……。
それでも私は、その手をほどく事が出来ずにいた。
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