第二章 『人と花』

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「じゃあ明日のお昼、仕事休みでしょ? ほうとう食べに行こうか、おごるよ」  脈絡のないお誘いをダメモトで切り出してみた。すると、ぷんすかした顔が嘘のようにぱっと晴れわたって、白い歯がこぼれた。 「えっ、いいの!? いくいく~♪」  僕はその、せつなのヒーリング魔法でも不可能なくらいの劇的な回復っぷりに正直とても驚いた。女性は単純なんだろうか、それとも複雑なんだろうか。わけがわからないけれど、なんとなくわかった気もする。  そこで僕はこの場を借りて、昔仲が良かった女の子の行動の、どうしても理解できないことを由佳に訊いてみようと思った。  昔、あの子は僕のことをどう思っていたのだろうか。どうして、「好きです」とかいわれたことすらなかったのに、急にあんなことをされたのか、その理由に少しでも近づきたかったから。 「由佳、ちょっと訊きたいんだけれど」 「えっ? 何?」  由佳はあらたまった僕の態度に急に真顔になり、椅子を引いて姿勢を正し僕の顔に向き合った。茶化さずちゃんと聞いてくれるつもりらしい。  だから僕は思い切って質問してみた。 「由佳は、好きになった人に告白ってできる?」
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