第三章 『女の子っていうものは』

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 それは誰にも邪魔されない時間だったし、僕たちにとって一番楽しい時間でもあった。その女の子とは仲良くなって、「新ちゃん」「雪ちゃん」と名前で呼び合うようになった。  そして僕と雪ちゃんは二人とも、休み時間にクラスでバカ笑いをしているような集団に入るのがとても嫌で、でも同級生の目もあってふたりでいることは気が引けたので、それぞれがひとりで本を読んでいた。その時の僕は、今度はこんなことを雪ちゃんと話そうとか、いつも二人の時間を楽しみにしていた。  けれども中野の家が小さかったという理由で、僕の家族は十二月に福生に引っ越すことになった。それを雪ちゃんに話したのはたぶん夏休みが明けてからだと思う。  雪ちゃんがどんな表情で聞いていたのかを、僕は憶えてはいない。僕はあまりそういうことを気にかけたりできるほど大人じゃなかった。  そして十月頃だと思うけれども、クラブ活動が終わった後、僕たちが夕方の教室にふたりでいたときだった。なんでふたりだけだったのかわからないけれども、一緒に教室に戻ろうよと雪ちゃんが言い出した気がする。
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