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中学生として最後の夏休みは、最悪な出来事と共にスタートした。 「花波(かなみ)のことが好きだ」 呼び出された神社の赤い鳥居の前で幼馴染の昴(すばる)にそう告げられた時、わたしは左手に広がる瑠璃島港を見つめていた。 ちょうど、昼の便のフェリーが出港していくところだった。 その船尾が小さくなるのを見送りながら、わたしの心は冬の海のように冷たくなっていった。 昴とは物心つく前からずっと一緒だった。 瑠璃島の観光の要である、ドルフィンスイムが売りのダイビングスクールを経営する昴の両親は、オフシーズンはわたしの両親が営む漁業を手伝っていた。 うちの実家は夏休み限定で民宿をしていて、昴の所のダイビングスクールに来るお客さんが多く泊まりに来た。 そんな持ちつ持たれつの関係を長年築いてきた両親のもと、家族ぐるみの付き合いを続けてきた昴のことを本当の兄弟のように思っていた。 しかし、それだけが理由で、昴の告白を受け入れられないのではない。 優しく、家族思いで、ひょうきんな所のある昴といるのは楽しいし、ここ最近で急に背が伸び筋肉質になってきた姿を、わたしはむしろ好ましく思っていた。
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