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昴とはその日以来、口を利かなくなった。 繁盛期を迎えた民宿の手伝いが忙しくなり、そのことについてわたしは深く考えなかった。 予約帳に書かれた最後の客を見送り、わたしたち家族の目の回るような生活が終わりを迎えると、夏休みは残り一週間となっていた。 その日、わたしは広い畳の客間に一人で寝転がって文庫本を読んでいた。 寝返りをうつたび、腰まで伸ばした髪が畳に擦れてシャラシャラ音を鳴らした。 開け放たれた窓からたまに入る風が涼しい。 すだれに光を遮られた室内は薄暗く、昨日まで大勢の客で賑わっていたのが嘘のような静けさだった。 視界に人影を捉え、顔を上げた。 目の前に、知らない男が立っていた。 物音一つしなかったので、全く気がつかなかった。 島は治安がいいので、どこの家も日中は鍵をかけない。 わたしは咄嗟に体を起こし、身を引いた。
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