目覚め

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「姫、申し訳ないですっ。護衛の俺がお側を離れていたばかりにっ」   膝をついて謝る青年は、私付きの護衛である野鷹(のだが)だ。歳は17歳と若く腕がいいものの若すぎるので良く家の者のパシリにされている不憫な青年だ。  今回は男鬼の情報を占術屋から仕入れ、素早く朱組合に伝達しに行った功労者でもある。その朱組合は、魑魅魍魎を倒すことを専門としており、退治屋とも呼ばれる組合で、腕っぷしにかけては、即戦力となる者たちが多く集う場所でもあった。 「いや、野鷹のおかげで助かった。ありがとう」  だからこそ、この程度の怪我で済んでいるわけだが。  次々に繰り出される威力の高い術に巻き込まれないよう、野鷹に抱えられそこから離れた。懐から取り出した清潔な布を野高は額の傷口に押し当てる。  野鷹が泣きそうな表情をして、「ひめぇ~」と情けない声をあげた。白い布が赤く染まっていくのを感じながら、横目で今何が起こっているのかと目を瞬かせる。  本来後衛であるはずの術士達が壁のように立ち並び、障子の先にいる男鬼へと集中砲火のごとく術を展開させている。  雷神、風神もこれには下がらずにはいられなかったようで、私の側まで戻ってきた。そんな美男美女の二人を見て、野鷹は口をパクパクとして驚いていた。ただ、顔よりも彼らが地上から数十センチ浮いている状況に驚いているようだったが。  術士が攻撃を止めると、白い粉塵が空へと向かって舞い上がっていく。  一拍後、前衛である武装した者達が破壊された家屋にいるであろう男鬼へと向かって一斉に飛び込んでいった。
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