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八畳ほどの畳縁のない畳は新しくイグサの香りが強い。白い和紙が張られた障子にはサクラだろうか花の透かしが入っている。その障子の前には私の膝ほどもない低い文机が置いてある。
設えたそれはどこか寒々しく、記憶にある机とはまるで違っていた。
ゲームの世界に似ている。と、頭に響く。
記憶を思い起こさせる要因といえるもの。
無かったものが私の内に入り込んだのか、そもそも沈んでいた記憶が浮き出てきたのか、それを知る術が私にはない。
この世界は少年がプレイしたことのあるゲーム世界に似ているようだ。ネットに繋がることで大規模多人数同時参加型オンラインプレイが楽しめるものでMMORPGとも呼ばれている。
かなり思い入れがあったゲームのようだが、記憶が安定しておらず、部分的な記憶が抜けている。
わかることといえば、絆戦と呼ばれる戦闘が人気を博していたと思う。多人数vs多人数で繰り広げる絆戦は、三ヶ月に一度ある。
その絆戦に向けて、どの程度の規模でいくつギルドが連携、介入するか検討し、前・中・後衛の部隊編成や所持するレア武器に必要なアイテム数、時間差での出撃方法などを共有する。
切り込みとして先陣を引っ張る部隊に抜擢されるギルドのメンバーは一様に高レベル帯だ。彼らは意気揚々とそれぞれに準備を行う。
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