5人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前には元凶ともいえるヤツがいる。
この部屋がすべてで、庭にさえほとんど出たことがない私に、どうしろというのか。
そんな時ですら、前世の記憶という情報が流れ続けていた。
流れ込む前世の記憶からわかることと言えば、良くも悪くもマイペースな少年だった。
ほぼ、少年だった頃の記憶しかない。
ゲームが好きで、飼っている犬が好きで、駆け回るのが好きで、兄弟に優秀な兄がいて、父も母も優しかったがいつからか、会話をすることがなくなっていた。
一人立ちをしてもかわらなかったようだったが、少年の頃の記憶よりも、それらの記憶は多くないということがわかる。
ひとつの意識に溶け込む中で、私と少年が対話をする瞬間があった。
これまで、大事に大事にされていた私を、少年はそれを違うと否定する。
本当の親にも会えず、1人部屋に籠り、外に出ることもままならない、それのどこが大事にされているのかと。
それを幸せだ。といえば、
―――それは不幸だ。
と少年は言う。
とても悲しくて切ないけれど言い返すだけの気持ちはわかない。
―――外の世界にどんなに楽しいことが満ち溢れているのか、知らないのだから無理もない。
と少年は言う。
少年の世界ではそうなのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!