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私は私としての存在は残るのだろうか……と不安になり目蓋を落とした。
ーーーーー
目が覚めたような気分で私は、ひとつため息をつく。
傷ついた気持ちがわずかに残っている。
幸せを普通に享受できればの話だ……と自嘲気味に呟いたそれは、少年の時の私か、それとも何も知らなかった少女の時の私なのか。
どこに聞こえるわけでもなく周囲の空気に溶けていった。
……ドゴンッ。
目の前の畳がVの字になってひしゃげている。そんな感傷に浸っている場合ではないことに気づく。
(死にそうになって前世と呼ばれる記憶が復活したってこと忘れてた!)
天井の梁を支えている柱に頭を打って、血だらけになりながら倒れてるところだ。白く細い腕でプルプルしながら、立ち上がろうと頑張ってる私。
その目の前で何かが動く気配がした。
仁王立ちで刀を片手に下げている角を生やした男鬼が、ギラギラとした瞳で嬉しそうにこちらを見ている。
私を殺すことがそんなに楽しいのかと思わせるような表情に冷や汗が吹き出た。
軽く刀を横に一閃させると新しい畳が剣風で浮き上がり、派手に障子が切り裂かれる。ゴロゴロと転がりながら、なんとか回避した。
(いやいやいや、アホじゃないの?!)
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