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『永久の月影』
少年の頃の名前も『永久(とわ)』だった。だからこそ、このゲームに思い入れがあったのかもしれない。そして、なんの因果か今の私も『永久(とわ)』という名だ。
偶然なのか、必然であるのか。妙な一致に不安になる。
ここで、うだうだと考え込んでいても何も解決はしない。
もう、『永久の月影』で戦った男鬼封印戦のように、中二病満載でやってる!
額から滴るように落ちてくる赤い液体を袖口で拭い、覚悟を決めた。
左手は鞘に見立て腰へ。右手は人差し指と中指を残して握り、手刀を作る。その手を前方へと突き出す。
「数多の猩々(しょうじょう)よ、彼(か)の者を封ぜよ。来たれ雷の護。来たれ風の護」
恐怖のメーターを振り切った声は、抑揚がなく凪いだ風のごとく静かだった。
それとは相反するように、体の周りから吹き上がる風を感じ、私の流れ出る額からは赤い飛沫が舞いはじめる。
男鬼は刀を持つ腕を上げたところだった。猩々と呼ばれる小さな紅い猿が何もない空間から次々と姿を現し、男鬼へと飛びかかる。
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