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「すげえ……俺、初めて見たわ。ああいう人形……」
「あれって、空気入れるタイプなんだね……。あたしは柔らかいマネキンみたいなのしかイメージなかった……」
「南極28号だか北極35号だか……そういうのはマネキンっぽいのらしいよ……」
「てか、浮き輪代わりに使ってるって……」
「いや、恋人と海ではしゃいでるつもりなのかもしれない!」
仲間が口々に意見を交し合う。
だがみんな一様に唖然とした表情で、まばゆいスダレとその唯一の恋人であろう、空気一杯ムチムチ彼女との戯れを見つめていた。
ザッピョーーーーン
ザッピョーーーーーーン……
やがて、溢れる愛を確認し終わったスダレオジサマは、彼女を大事そうに脇に挟んで……昨今ではあまり見られない横泳ぎで私たちの斜め向こうを陸に向かって戻り始める。
誰もが無言のまま、オジサマが無事に陸に上がるまでを見守った。
浜辺に上がったオジサマはスダレをサッと振り仰ぎ、小脇に抱えたビニール製の彼女と仲むつまじくどこかへ消えていく。
案の定、それを目にした浜の人々は好奇の目を隠そうともせず……後は言わずもがな。浜辺は軽いパニック状態に陥っていた。
「……大人って……」
そうつぶやいたのは仲間の誰だったのか。
そんな、夏の思い出……
ザッピョーーーーーーン♪
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