第1章  夏の庭で

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キスの仕方は知っていたわ。 ボーイフレンドと頬にしていたし子供じゃないんだから。 それにパパと愛人が唇を吸い合うようにしていたのを見ていたから。 目を開けたり閉じたりしてね。 パパの顔に愛人の赤いグロスがつくから、愛人はクスクス笑いながら手か麻のハンカチで拭いてあげてるの。 だったら、最初からグロスなんてしなきゃいいのにね。 パパ・・・私のパパ。 ねえ、愛人だけでなく、私も見てよ。 ・・・・・・・ ムスクの香り・・・くらくらする。 この緑は池の花の葉かしら、いいえ、学校のツタよ。 もうすぐ茶色の建物がうっとおしいほどのツタでつつまれるようになる。 大好きなパパがどうして、ココにいるの? 私は男の後をもう少し追うと、男は気が付いて微笑んだ。 「やあ、今日は暑いね。」 ・・・・・・・ パパは煙草は吸わないけれど、フレンチの後にはブランデーを飲みながら葉巻を吸っていた。愛人は葉巻は吸わないけれど煙草は吸っていた。 だから、私はあの煙草の匂いが嫌いなの。 それに、愛人は食前酒にシェリーを飲みながら横目でパパを見つめて! 私は、あのヒトがテーブルクロスの下でしていたことを知っていたのね。 ガーターベルトが見えそうになる位に足をのばして、指先でパパに触ろうとしていたの。 パパは何食わぬ顔でいたけれど、私が気が付かないと思っていたのかしら? それとも、わざとわかるように? 私もパパに触れたけれど、足が届かない席で出来なかったのね。 悔しいから、愛人の足に悪戯してやったわ。 あのヒト、どうなったと思う?
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