第3章 大人って淋しい金魚みたい

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第3章 大人って淋しい金魚みたい

「インセストタブー」と文化人類学の先生は授業の間に何度も叫ぶように説明して進めていった。 発展途上国のある場所では、近い血縁者同士の結婚は出来ないのだとか。日本ではいとこ同士も出来るから、そんなのは、別の場所ではとんでもないことなんですって。 この先生の授業は「楽勝科目」と言われ、出席率は悪かったのだけど、私には面白くて好きだわ。 高い教科書も買ったんだけど、そんなのは必要ないって先輩からも聞いたいたし、ノートをとっていたから話しだけで楽しめる。いえ、勉強になってるわ。 後ろの方で男子達が家庭教師センターの登録や、直接、親と交渉すればいい・・・なんて話している。 段々、話が盛り上がってきてるから、先生がチラチラと見て、 「君たち、退室しなさい。」と注意する。 1人の男子はぶす~とした顔をして、教室を出る前に先生に 「あいつらが騒いでるから、静かにしろと注意してやったのに、このタコ禿」 と吐き捨てるように言って出て行った。 確かに、そうなんだから、キチンと先生に説明できないのかしら。 家庭教師のことで話していた男子達は、荷物をガサガサと音を立てながら片づけ、 「すいませ~ん。」 と言いながら悪気もなく退室していった。 ・・・・・・・ どうして男子達はパパみたいじゃないのかしら。 パパはマナーもあって、帰宅した時に私にまで「失礼」と言いながら上着を脱いでいたのよ。 私はそんな時、愛人にするようにキスされるのを期待していたんだけど。 でも、愛人がすぐに来て、パパの首に手をまわして! どうせパパといやらしいことをするつもりなんでしょ。 私は2人の後をこっそりとついて行ったのね。 ほうら、やっぱり・・・予感が当たって、私はクスクス笑ってしまったわ。 あら、いけない。口に手をあてないと、聞こえちゃうわ!
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