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携帯を枕元に置き、加納はベッドから体をどかした。
六畳のフローリングにはベッドに本棚、テレビ、そして角が欠けた机が何の基準もなく並べられている。
加納は押入れに潜り込み、収納ケースの一段目を引いた。
アイロンのかけられていないシャツが数枚と紺の靴下がある。
加納は舌で歯裏を舐めて二段目を確認し、そこに収まっていたタオルで両眼を覆った。 後頭部で蝶々結びをしようとし、長さが足りないことに焦る。
なぜこのようなことをしなければいけないのか。
それは一村が出した条件が目隠しをして出迎えることだったからだ。
タオルがアウトならば靴下を試しに伸ばして巻きつけようか。
愚行の堂々巡りをし、結局、ネクタイに辿りついた。
長さも適当で、横になっても不自由はない。
これで一村を迎え入れる準備は整った。
ネクタイを外し、加納は携帯を握り締めた。
他愛のない会話しかしなかったが、ここ最近で加納が接した唯一の人間。
顔も、生きてきた背景も、何も知らないが、それがかえって無用な気を使わずに済んだ。
加納は瞼を下げた。
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