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 携帯のバイブに飛び起きたのは、午前二時だった。  見慣れた番号に即座に出る。 「鍵を開けてくれ」  一村の命令に従う。 「開けた」 「じゃあ、目を隠して」  携帯を靴箱にのせ、加納はネクタイを巻いた。 「入ってもいいか?」  一村の声を頼りに、手探りで携帯を掴む。 「ああ」  ノブが回り、金属の止め具が意味を失くす。 「こんばんは」  携帯と直に発せられる二種類の声に加納は戸惑った。  機械を通してではないその声は、特徴のないあっさりとしたものだった。
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