プロローグ

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 宏が手紙を書いている。  夜に書くと感情的になるから止めろと言っているのに、勉強で時間がとれないからと、いつも午後十時を過ぎてからシャーペンを握る。  友人は、自分もマンションを借りているのに、わざわざ佐藤の部屋に来て、翌日の朝まで居座る。  医学部とまではいかなくとも、こちらだってそれなりに勉強が過密スケジュールで組み立てられている。  それなのに、こいつはお構いなしだ。  四畳間のほぼ半分を占拠してしまう布団の上で、佐藤は缶ビールを煽った。  家賃四万五千円。  築五十年の物件だが、最寄駅から徒歩三分の好立地なのが目を引き、即決で契約した。  実家から名古屋までは急行で三十五分で行ける。  名古屋のベッドタウン。  母は通いなさいと言った。  出ていくと啖呵を切ったのは、佐藤だ。  
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