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 ここ何日かで、就職活動は受験勉強とは違うと実感した。  いや、塾に行けば、多少は安心が得られたかもしれない。  SPIも鍛錬を積まなければ解けやしないし、面接だってシミュレーションは大きな財産だ。  正直、専門学校へは通いたかった。  自分が選んだ学部は芸術で、その上、文芸だったから。  DTPやフォト、イラストレーションが学べたならまだいい。  母校は技術は教えてくれなかった。  だからこそ、加納はこれといった強みがないまま、雑草をかき分けるように就職活動に挑まなければいけなかった。  だいたい小説家になりたかった人間が、自分を売り込めるとしたなら、感受性と妄想狂だという抽象的な、一円の価値にもならないことしかない。  気心の知れた助手が大学院を勧めてくれた。  教授との顔合わせもしたが、奨学金を使ってまで院へ行く意味を、加納はどうしても見いだせなかった。  理系と文系では雲泥の差がある。
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