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「あいつの誕生日のときも、気づいたらたっくんの話ばかりしてて、それをあいつとその恋人が黙って聞いてくれてたんだよ。そのとき初めて思ったんだ。ああ、俺はもうみのりのこと、過去にできてるんだって」
同じ日、和田は杉浦に恋人がいることを知った。そしてその翌日に杉浦に問いただして、自分たちは距離を置くことになったのだ。
「きっと俺、浮かれてたんだと思う。嘘をついてることを忘れてたなんてな」
「違うって言ってくれればよかったじゃないですか」
杉浦は黙って首を振る。
「一度冷静になろうって思った。嘘をついているのは、俺だけじゃない。みのりもなんだ。俺のワガママで嘘をついているみのりのことを思ったら、それは無理だった。それに、たっくんも俺から離れて 自由になれた。他の先生とも、女の子とも行動するようになって…」
「違います!……それは!」
「俺、大切なものを失くしたときのつらさ、知ってたはずなのにって」
「待って下さい!俺が、先生のこと忘れるはずがないじゃないですか!」
杉浦の腕を思わず、掴んだ。
「たっくん……」
「どれだけ俺があなたのことを思っていたか!わかってますか?あなたと間違えて、蝶野先生を押し倒すくらい……!」
杉浦は目を見開いた。
「マ、ジかよ、たっくん……」
「酔っていたんです。あの日、楠木先生から話を聞いて、実際はもう別れてること知って、俺はどうしたらいいのかわかんなくなって、待っていてくれた蝶野先生と一緒に…二人で会ったことなんてあの日が初めてです」
「食事に行ったってあの日か」
「あの日の俺は本当に参ってたんです」
「そっか……」
「蝶野先生には、もうお断りしています。自分が杉浦先生が好きだってことも蝶野先生は気づいてました。何があっても、気持ちが変わらないことも言いました。誰もあなたの代わりにはなれないんです」
「うん……」
掴んでいた杉浦の腕を引き寄せ、抱きしめた。
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