第十章:貴方の隣で咲く花になりたい

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「あいつの誕生日のときも、気づいたらたっくんの話ばかりしてて、それをあいつとその恋人が黙って聞いてくれてたんだよ。そのとき初めて思ったんだ。ああ、俺はもうみのりのこと、過去にできてるんだって」  同じ日、和田は杉浦に恋人がいることを知った。そしてその翌日に杉浦に問いただして、自分たちは距離を置くことになったのだ。 「きっと俺、浮かれてたんだと思う。嘘をついてることを忘れてたなんてな」 「違うって言ってくれればよかったじゃないですか」  杉浦は黙って首を振る。 「一度冷静になろうって思った。嘘をついているのは、俺だけじゃない。みのりもなんだ。俺のワガママで嘘をついているみのりのことを思ったら、それは無理だった。それに、たっくんも俺から離れて 自由になれた。他の先生とも、女の子とも行動するようになって…」 「違います!……それは!」 「俺、大切なものを失くしたときのつらさ、知ってたはずなのにって」 「待って下さい!俺が、先生のこと忘れるはずがないじゃないですか!」  杉浦の腕を思わず、掴んだ。 「たっくん……」 「どれだけ俺があなたのことを思っていたか!わかってますか?あなたと間違えて、蝶野先生を押し倒すくらい……!」  杉浦は目を見開いた。 「マ、ジかよ、たっくん……」 「酔っていたんです。あの日、楠木先生から話を聞いて、実際はもう別れてること知って、俺はどうしたらいいのかわかんなくなって、待っていてくれた蝶野先生と一緒に…二人で会ったことなんてあの日が初めてです」 「食事に行ったってあの日か」 「あの日の俺は本当に参ってたんです」 「そっか……」 「蝶野先生には、もうお断りしています。自分が杉浦先生が好きだってことも蝶野先生は気づいてました。何があっても、気持ちが変わらないことも言いました。誰もあなたの代わりにはなれないんです」 「うん……」    掴んでいた杉浦の腕を引き寄せ、抱きしめた。
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