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「杉浦先生」
「なーにー」
「これからどうするんですか」
「これから?帰るけど?一日スーツで疲れたわ。早くジャージに着替えてぇ 」
「そうじゃなくて!今日は卒業式ですよ」
「知ってるよ。春からのこと考えるのは明日からにしよーぜ」
「先生!」
とっさに杉浦の腕を掴んでいた。
杉浦は振り向かず、そのまま足を止めた。それは校門まであとわずか、の距離だった。
「……なんだよ」
「俺が、先生は恋人がいらっしゃるのに、俺とこういうことをするんですかって聞いたとき、先生は否定しませんでしたよね」
杉浦は何も応えなかった。
「すみません。楠木先生から聞いてしまったんです。もう恋人じゃないってこと」
「……そっか」
「そのとき、俺、先生は児童のために隠してるんだって思い込んでました」
「ははは。思い込んでたって、なんだよ」
杉浦が笑って、その肩が揺れた。
「もしかしたら、ですけど、先生、認めたくなかったんじゃないですか」
「は……?」
振り返った杉浦の顔は、小さく驚いていた。
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