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薄く目を開くと、隣に杉浦はいなかった。
慌てて起き上がると、ベランダにシャツだけひっかけた杉浦が外を見ていた。その手には煙草があった。
和田はそのままベランダまで歩き、窓を開けた。
「先生」
声をかけると杉浦はこちらを向いてくれた。
「起きたか?」
自分に気づいたからか、杉浦は持っていた煙草を地面のコンクリに擦り付けて火を消した。
「よく寝てたから起こさなかった」
「はい……」
今はとにかくその姿が近くにあったことに安堵する。
和田は、裸足のまま、ベランダに出て杉浦の隣に並び、しばらく、ぼんやりとベランダから見える景色を黙ってみていた。
こうして薄着で外に出ても、寒いという季節ではなくなった。時間にして23時頃だろう。うっすら見えている駅前の飲み屋街のネオンがまだ明るい。
「なぁ」
杉浦がまっすぐ前を向いたまま呟いた。
「なんです?」
「ケツが痛いんだけど」
「あっ……」
言われて、カァっと顏が赤くなる。確かに夢中になって腰を穿った気はするが、一体、自分は何回くらい、吐き出しただろうか?
指折り、一回、二回、三回、と数えていると隣で杉浦がくすくすと笑った。
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