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「そんな俺の気持ちも知らないで、あなたは俺に男同士よりは健全だって……言った」
「ごめんって……俺も、冷静にはなれなかったんだよ」
「こんなにあなたのことが好きなのに!」
「うん……わかったよ。ごめんな」
杉浦の手が和田の頭を優しく撫でる。何度も、何度も撫でる。
この手じゃなきゃ無理だって、もっと前に言えばよかった。もっと早く杉浦を自分のものにしてしまえばよかった。
でも、やはり卒業した今じゃないと杉浦は本当の気持ちを言ってくれなかっただろう。
杉浦のそういうところも好きだから、仕方ないのだ。
「もう後輩じゃ嫌です。隣の席の先生、じゃ耐えられない」
「うん」
腕を緩めて杉浦の目を見つめた。その目は、その先に続く言葉を待ってくれている目だった。
今なら、言える。そう思った。
「俺と付き合ってください」
杉浦は穏やかに息を吐いて、頷いた。
「喜んで」
「先生……」
杉浦の小さな体を自分の胸に強く引き寄せた。和田の背中にまわされた両腕が、同じくらいに強くて、やっとこのときが来たのだと思った。
――やっぱりだめだ。
「うわっ……!」
気づけば、杉浦を抱き上げていた。
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