第十章:貴方の隣で咲く花になりたい

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「優しく……しますから」 「はは、全然説得力ねぇのな?」 「……手加減します」 「はいはい」  杉浦を抱き上げたまま、寝室へ向かい、再びベッドに和田を運んだ。  杉浦を組み敷いて、キスをしたあと耳元で聞いた。 「ひとつお願いしていいですか?」 「ひとつと言わずに、いくらでも」 「えっと……名前で呼んでほしいんです」 「名前?」 「拓海って」 「そんなことがお願いなの?かわいいなぁ、たっくんはー」  また杉浦は、くしゃくしゃと頭をかきまわすように撫でてくれる。 「じゃ、拓海?」 「はい」 「ずっと俺のそばにいろよ」 「はい…!」 「おまえの居場所は俺の隣以外にはないと思え」 「はい……!!」  目元を緩めた優しい顏は、それでいい、と褒めてもらえたような気がした。  かつて自分は、狂犬だなんて言われたこともあった。けれど杉浦の前では、許可なく狂犬にすらなれやしない。自分はこの人には敵わないし、服従という立場にすら喜びを感じている。何より絶対的な包容力が自分にだけ向けられている。  自分は、こんな風に甘えられる場所を探していたのかもしれない。  そのあとも、何度も求めた自分に杉浦は応じてくれた。  ほんの少しも杉浦と離れていたくなくて、手をつないだり、抱き合ったり、腕の中にとじこめたりした。  杉浦は、きっと呆れてただろうと思うけれど、されるがままになってくれた。それでも今はくっついていたかった。離れてた時間を埋めたかった。  そして二度とこの人を離さないと自分に誓った。
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