第十章:貴方の隣で咲く花になりたい

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*** 「よーし、部屋のクリーニングはだいたい終わったぞ。腹減ったー!」 「純太郎さん、おつかれさま。こっちもちょうど昼ご飯できたよ」  お茶を入れている要がツナギ姿の純太郎に返事をしている。  そして、その後ろからジャージ姿の杉浦も和田の部屋に 入ってきた。 「荷物少なかったんですって?もう片付きました?」  和田もできたてのピラフを皿によそいながら、杉浦に話しかける。 「ああ、午前中に買った家具も届いたから」 「そっか。じゃあ、夜は落ち着けそうですね」  春休み最後の週末、要が引っ越した後の部屋に杉浦が引っ越してきた。彼女と過ごした思い出の部屋を引っ越せないでいたという杉浦は、親友の要がここを出て行く話を聞いて、ダメもとで管理会社に交渉してみたのだ。  要も協力してくれたおかげで、清掃やクリーニングもすべて要の恋人である純太郎の会社がやってくれることになり、所有者変更は問題なく成立した。  朝から、純太郎の会社の若い連中が、修行も兼ねて荷物のなくなった要の部屋を掃除し、また杉浦の荷物も純太郎の会社のトラックで運び出すという、すべて身内による引っ越しになった。 「要から聞いた。おまえ、料理うまいんだってな」 「お口に合うか、わかりませんケド……」 「ほら、純太郎さん手を洗ってきてください!先生も!」  純太郎と杉浦は目をあわせて、ハイハイと素直に従った。こうしてみていると、要は純太郎の前では、ほどよく口やかましい嫁のようだ。 「和田の作った料理なんだからうまいに決まってる」 「ははは、要がそんなこと言うから、ハードル上がっちゃったじゃん」  二人で顔を見合わせて笑った。
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