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「和田だって、隅に置けないじゃないか」
要は耳元で声をひそめて、話し始めた。
「えっ、ただの職場の先輩、だってば」
「あ、そうなのー?僕、純太郎さんに和田の恋人って言っちゃったけど、ここで訂正する?」
「て、訂正はしなくて……いいけど」
「じゃあ恋人でいいじゃないか。甲と丙は付き合うことになった、と」
「また、そのたとえ……? わかりにくいってば」
「ほら、僕が言ったとおりじゃないか。丙は甲のことが好きだった!」
「もうー!だからその言い方!」
「拓海」
突然、和田の名前を呼ばれて、和田だけでなく、要もぴたりと動きを止めた。
そっと杉浦に顔を向けると、その顔は明らかに不機嫌そうだった。
「……はい」
「あとで、掃除機貸してくれる?あと少し、掃除したいから。一人で」
「手伝いますよ……!」
「さー、要、俺たちも若い連中つれて帰るぞ」
「え、あ、はい」
立ち上がった純太郎のあとに、要も立ち上がる。
「要、あとでお仕置きな」
「ふぇっ!?」
「じゃ、先生。お邪魔しました。ピラフ美味しかったぞ、犬」
「犬!?」
玄関に向かって、からからと笑う純太郎と、その後ろに顔色が途端に悪くなった要が続く。
その後ろから、和田と杉浦が見送る。
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