第十章:貴方の隣で咲く花になりたい

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「わ、マジ勘弁して。明日学校なのに」 「任せてください。手加減します」 「したことないじゃん、たっくん」  逃げる杉浦を追い回すが、狭い部屋じゃ鬼ごっこにもならず、すぐに腕の中に杉浦を捕まえる。 「えへへ、先生?」 「なんだよ」 「春からも、どうぞよろしくお願いします」 「学校で?それともプライベートで?」 「どっちも、です!」 「こちらこそ、俺の夕食は任せたからな」 「え!毎日食べにくるつもりですか?」 「そうじゃなきゃ、引っ越してこない」 「うっそ。 ひどいな、ご飯目当てですかぁ?」  くすくす笑う腕の中の先生の頬にそっと口づけた。  四月、また新しい児童と出会う。  一年前も、新しい出会いに、わくわくと胸を踊らせ、かわいい児童と、信頼できる先輩に恵まれた。  そして今は大切な人も出来て、迎える二度目の春。  この人の腕に引かれて、堕ちた先には花が咲いていた。その花は気まぐれに揺れるくせに、自分を穏やかな気持ちにしてくれる。  そしてまた自分もこの花のように、いつか大きく開花するのだ。  その花の隣で、咲き誇るのだ。これからもずっと。 <完>
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