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「話はそれだけ」
この場を一刻も去りたい。その一心で背を向ける。
「待ってください」
小さく拓海の声が引き留める。やっぱり嫌だと言われたら、自分はなんと答えるつもりなのだろう。
「何?」
後ろを振り返らず、扉に手をかけたまま返事をした。
「具体的にはいつまで、ですか?」
「……たっくんがちゃんとするまで」
「それは杉浦先生から見て、ですか?」
「そうなるな」
「メールも駄目ですか?」
何かつなぎ留めておきたい。今までと変わらない何か、恋人であることのつながりを残したいのだろう。
「自分で考えろ」
それだけ告げて、扉を開けて外に出た。もうあんなかわいそうな恋人の姿を見ていたくなかった。
――でも、こうするしかなかった。
恋人になる前の和田拓海という男はちゃんとしていた。自分と付き合ったせいで、ダメになっていく彼を見ていられなかった。自分のせいで彼の教師人生を汚したくはない。自分さえいなければ彼はちゃんとできる。
だから今は自分から離れて、元の和田拓海に戻ってもらうだけだ。それだけだから、と言い聞かせ、自分の部屋に戻った。
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