2004人が本棚に入れています
本棚に追加
/160ページ
いつもと変わらない今日がやってきた。いつも通りに起きて、学校に向かう。唯一、違うのは、欠勤届に風邪と書くべきだろうか、どうだろうか、と少し頭を悩ませたくらいだ。
職員室に足を踏み入れた自分を、その場にいた先生たちが一斉に見た。そして、誰もが「おはよう」といつもと同じ挨拶に少しだけ優しさをのせて声をかけてくれた。
「心配かけてすみません」と頭を下げ、席につく。いつもと同じように、授業の時間割チェックをする。
「おはよ、たっくん」
振り向けば、そこにはジャージ姿でけだるそうに歩いてくる杉浦の姿があった。和田の隣の席に、ガタンと音を立てて椅子に座り、スマホを弄りだす。
「おはようございます。なんか面白いニュースありました?」
「んー、たまごっち新作発表、くらいかな」
「ああ、懐かしいな。たまごっち」
いつもと同じ一日が始まった。
「先生、大丈夫?」
「もうなおったの?」
「うん、もうすっかり元気になったよ」
違うのは、ほんの少しだけの心に余裕ができたことと、たった一日見なかった先生方や生徒が愛しく思えたこと。
「なんですか?」
「べーつに?おーい、おまえら、運動会の練習はじめるぞー」
自分を待っててくれた人がいると知った。
その人の背は小さいけれど、大きな人。今の自分は、十分すぎるほど幸せだと気づかせてくれた。
杉浦と笑い合う自分のクラスの児童を見ながら、和田は目を細めた。
「俺の居場所はちゃんとあるから、心配しないで。要」
いつか、そう告げられる日も近いと和田は思った。
最初のコメントを投稿しよう!