第一章:小さい先輩の大きな背中

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 ちゅっと音を立てて離れたその唇は和田に向かって小さく呟いた。 「素直になった、ごほーび」 「……なっ」 「じゃ、あとの戸締りよろしくな」 「え、あのっ……」 「おつかれー」  ぴしゃりと教室の扉が閉まる。  しんと静まり返った教室に自分だけが取り残された。  あまりにもスマート過ぎて何が起こったのか、まだ理解できない。 ――キスされた?  だんだんと現実という光を帯びて頭が冴えてくる。と、同時に襲ってくる羞恥。  学校の先生と、しかもいつもお世話になっている杉浦に唇を奪われるなんて、明日からどんな顔して過ごせばいいのだろうか。  握り締めた花は、そんな和田の心をあざ笑うかのように咲かせていた。
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