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ちゅっと音を立てて離れたその唇は和田に向かって小さく呟いた。
「素直になった、ごほーび」
「……なっ」
「じゃ、あとの戸締りよろしくな」
「え、あのっ……」
「おつかれー」
ぴしゃりと教室の扉が閉まる。
しんと静まり返った教室に自分だけが取り残された。
あまりにもスマート過ぎて何が起こったのか、まだ理解できない。
――キスされた?
だんだんと現実という光を帯びて頭が冴えてくる。と、同時に襲ってくる羞恥。
学校の先生と、しかもいつもお世話になっている杉浦に唇を奪われるなんて、明日からどんな顔して過ごせばいいのだろうか。
握り締めた花は、そんな和田の心をあざ笑うかのように咲かせていた。
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