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「田村、彼氏ほしいの?」
私は驚いて振り返る。休憩から戻ってきたんであろう川島くんが、私を見下ろしていた。っていうか独り言、聞かれてた。恥ずかしい。
「え?あ……。そう、かも……」
「ふーん」
川島くんは私の隣に並ぶ。
「彼氏つくればいいじゃん」
当然の指摘に、私は渇いた笑いを落とした。
「いや、そんな簡単につくれないでしょ」
世の中のカップルは、どうやって彼氏彼女になるんだろうか。私からすれば、一種のミステリーだ。大学生とかになれば、そういうのが分かるんだろうか。ふと私は疑問に思って、川島くんに訊ねる。
「川島くんは?彼女いる?」
川島くんはじとっとした目で私を見た。
「いたら毎日ここにいない」
「はは!そうだよね」
川島くんもほぼ毎日ここで働いている。よかった、仲間がいた。
「でも、ここで彼女見つけた人もいるよ?去年そういう人いたから。だから諦めちゃだめだよ!」
私は川島くんを励ました。私も彼氏いないんだから、同類だろって感じで失礼かもしれないけど。私がぐっと拳を固めると、川島くんは首を傾けた。じっと見つめられて、私は言葉に詰まる。
川島くんは、割と表情が読めない。接客業なのに基本、仏教面。でも仕事を覚えるのは早いし、結構器用で伯父さんに気に入られてる。私は川島くんがどう思ってるのか分からなくて『どうしたの?』という顔をする。川島くんがゆっくり口を開いた。
「じゃ、田村が彼女になってくれる?」
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