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竜人にはジャックにかける言葉が浮かばなかった。
「ところでにーちゃんはあんなところで何を暗い顔をしてたんだ? 俺の愚痴を聞かせたお詫びに、なにか悩みでもあるのなら話ぐらいは聞くぞ。」
竜人はどうしようか悩んだが、細かいことは暈しながらエリスたちのことを話した。
話を聞き終えたジャックが答える。
「なるほどな。にーちゃんの実力でも守りきれないとは、相当の奴等を相手にしているわけか。」
竜人は少し驚いた表情でジャックの方を向く。
「俺はこれでも組織の頭張ってるんだぜ。相手の実力くらい、ある程度把握できなきゃ務まらないんだよ。」
ジャックは少し考えてから竜人に話しかけた。
「俺には偉そうに言う資格はないが、それでも言えるとしたらにーちゃんの下した判断が何であれ、それが何かから逃げるためのものなら必ず後悔する。今の俺のようにな。」
ジャックが竜人の方を見つめる。
「失敗してもやり直しの利くことはいくらでもあるだろう。でもな、絶対に取り返しの利かないことだってこの世にはある。何が正しいのかなんて未来のわからない俺たちには、その時になってみなけりゃわからない。だからせめて判断を下す時は、自分の気持ちと相手の気持ちに誠実に向き合うことだ。」
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